アメリカ・ザ・ビューティフル
America the Beautiful

コロラドスプリングスに広がるアメリカの神秘的な大自然

アメリカ合衆国の西部に広がるロッキー山脈の一角、コロラド州の東部にそびえる標高4,302メートルの山頂「パイクスピーク(Pikes Peak)」。

アメリカ愛国歌『アメリカ・ザ・ビューティフル(America the Beautiful)』の歌詞は、このパイクスピーク山頂から見たアメリカ大自然の美しさ・壮大さに感銘を受けて作詞されたという。

作詞者のキャサリン・リー・ベイツは一体どのような人物で、どんな経緯でパイクスピークを登ったのだろうか?詳細は後述する。

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歌詞の意味・和訳

1.
Oh beautiful, for spacious skies,
For amber waves of grain,
For purple mountain majesties
Above the fruited plain!

何と美しいのだ 広大な空よ
琥珀色に波打つ岩肌よ
荘厳な深紅の山々よ
果実をもたらす平原の上に!

America! America!
God shed his grace on thee,
And crown thy good with brotherhood,
From sea to shining sea.

アメリカ!アメリカ!
主は汝に恩恵を与えたもう
冠を頂きし同胞達との幸福
太平洋から大西洋へと広がりゆく

2.
Oh beautiful, for pilgrims' feet
Whose stern, impassioned stress
A thoroughfare for freedom beat
Across the wilderness!

何と美しいのだ 先人達の歩みよ
揺るぎ無き熱情に満ちた奮闘よ
荒野に渡る自由への轍(わだち)よ!

America! America!
God mend thine ev'ry flaw;
Confirm thy soul in self control,
Thy liberty in law!

アメリカ!アメリカ!
主は汝の傷を癒したもう
汝の魂はもはや束縛されることなく
汝の自由は法に刻まれたのだ!

3.
Oh beautiful, for heroes proved
In liberating strife,
Who more than self their country loved
And mercy more than life!

何と美しいのだ 英雄達の自由への奮闘よ
自らを犠牲にして祖国を愛する人々よ
そして命をも厭わない慈愛よ

America! America!
May God thy gold refine,
'Til all success be nobleness,
And ev'ry gain divine!

アメリカ!アメリカ!
主が汝の黄金を精錬されんことを願わん
全ての結果を崇高ならしめ
全ての収穫を神聖ならしめるまで

4.
Oh beautiful, for patriot's dream
That sees, beyond the years,
Thine alabaster cities gleam
Undimmed by human tears!

何と美しいのだ 愛国者の夢よ
幾年にも渡り 白くきらめく街
涙で濁ることなきその輝きよ!

America! America!
God shed his grace on thee,
And crown thy good with brotherhood,
From sea to shining sea.

アメリカ!アメリカ!
主は汝に恩恵を与えたもう
冠を頂きし同胞達との幸福
太平洋から大西洋へと広がりゆく

歌詞はこうして生まれた

作詞者のキャサリン・リー・ベイツ(Katharine Lee Bates/1859–1929)は、 マサチューセッツ州ウェルズリーに本部を置く私立名門女子大学「ウェルズリー大学(Wellesley College)」を1880年に卒業した。

ウェルズリー大学は、東部私立名門女子大セブン・シスターズの一つで、卒業生にはヒラリー・クリントン元国務長官、 マデレーン・オルブライト元国務長官など、政界の重要人物を輩出する名門女子大学として知られる。

写真:コロラドスプリングスの「Garden of the Gods 神々の庭園」

キャサリン・リー・ベイツは卒業後、同大学における英文学の教授となった。1893年の夏には、コロラド大学(Colorado College)短期サマースクールの客員教授として、コロラド州の都市コロラドスプリングス(Colorado Springs)を訪問していた。

コロラドスプリングスは、ロッキー山脈の東側、パイクス・ピーク(Pikes Peak)のふもとに広がる海抜1,839mの大きな町。「Garden of the Gods(神々の庭園)」と呼ばれる巨大な赤い砂岩がそびえ、神秘的な大自然の風景が広がり、観光地としても知られている。

パイクス・ピークの山頂へ

サマースクールで教鞭を取っていたベイツら教師たちは、せっかくコロラドスプリングスに来たのだから、観光名所の一つであるパイクス・ピーク(Pikes Peak)に登ってみようと、草原馬車に乗って山頂を目指した。

途中からラバに乗り換えながら険しい山道を進んでいったベイツらは、慣れない山登りで体力的にも決して楽な道のりではなかった。しかし無事山頂にたどり着くと、それまでの疲れが一気に吹き飛ぶような光景を目の当たりにした。

そこには、グレートプレーンズやGarden of the Gods(神々の庭園)など、北アメリカ大陸の自然の神秘が凝縮された大自然が広がり、ベイツは非常に大きなインスピレーションを受けたという。

大自然からインスピレーション

ベイツは脳裏に次々と思い浮かぶ言葉を急いで書きとめ、一篇の詩にまとめあげた。2年後、アメリカ独立記念日を祝う文集「The Congregationalist」上で初版されると、たちまち大衆の共感を得て多くの人々に受け入れられた。

後にベイツの詩には様々なメロディがあてられ、アメリカの自然を讃える愛国歌として愛唱されていった。最終的なメロディとしては、1862年にサミュエル・ウォード(Samuel A. Ward)によって作曲された聖歌MATERNAが現在まで定着している。

なお、ウォードの曲がベイツの詩に組み合わされて初版されたのは1910年であるが、ウォードはその7年前に亡くなっており、自分が作曲したメロディが愛国歌『America the Beautiful』として新たに用いられたことを生前知ることはなかった。

アメリカ第2の国歌に

今日『America the Beautiful』は、アメリカ国歌『The Star-Spangled Banner(星条旗)』に勝るとも劣らない第2の国歌として多くのアメリカ国民によって愛唱されている。

特に、米英戦争をテーマとしたアメリカ国歌に比べて、アメリカの大自然を主眼とした穏やかでよりメロディアスな曲調は、様々なシチュエーションで無難に用いることができることから、これまで正式な国歌としての採用が一部で検討されたこともあったようだ。

なお、ベイツが登ったパイクス・ピーク(Pikes Peak)山頂には、彼女が作詞したアメリカ第2の国歌『America the Beautiful』誕生を記念すべく立派な歌碑が建立されている(上画像:出典 Wikipedia)。

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