アルハンブラの思い出 ギターの名曲

グラナダの丘にそびえるスペインの世界遺産アルハンブラ宮殿

『アルハンブラの思い出』は、クラッシクギターの名手タレガ(タルレガ)によるギター曲。タレガがスペイン最南部グラナダにあるアルハンブラ宮殿を訪れた際の印象を元に作曲された。

同じ音を連続して小刻みに弾く演奏技法「トレモロ( tremolo)」が駆使され、クラシックギター学習者であれば一度は挑戦してみたくなるであろう定番の名曲。

写真:アルハンブラ宮殿(スペイン・グラナダ市南東)

【YouTube】タレガ『アルハンブラの思い出』

「アルハンブラ」の意味は?

「アルハンブラ」とは、「赤い城塞」を意味するアラビア語がスペイン語化したもの。実際にアルハンブラ宮殿の構造物は白を基調としており、なぜこの建物にあえて「アルハンブラ」の名がつけられたのか疑問となる。

この点については、周辺の土の色や建物のレンガの色など諸説あるようだが、研究家の仮説によれば、アルハンブラ宮殿が増築された際、夜中までたいまつに火をともして工事を行ったため、灯に照らされたアルハンブラ宮殿は遠くから見ると暗闇の中で赤く浮かび上がって見えた、という説明がなされている。

アルハンブラ宮殿

上写真:アルハンブラ宮殿 ライオンの中庭

ムハンマド5世によるアルハンブラ宮殿への大改修

15世紀のイベリア半島では、キリスト教国による再征服活動、いわゆるレコンキスタ(Reconquista)が最終局面を迎えていた。

最後まで残っていたイスラム勢力は、グラナダを中心とするアンダルシア南部地方を支配していたイスラム王朝ナスル朝であった。

アルハンブラ宮殿への大改修が行われたのは、14世紀後半のナスル朝ムハンマド5世の時代であり、現代まで伝わる美しいイスラム建築・美術が反映された数々の宮殿が築かれた。

イスラム教徒にとってのアルハンブラへの思いとは?

1490年にカスティーリャ王国がグラナダを包囲すると、2年間にわたる包囲戦が展開された。1492年1月にアルハンブラ宮殿が陥落し、ナスル朝は滅亡。レコンキスタはついに終結した。

レコンキスタ完了後、アルハンブラ宮殿はカルロス5世の避暑地となった。イスラム時代のモスクはキリスト教の教会に建て替えられ、その後も礼拝堂や修道院などの増築・改築が進められた。

アルハンブラ宮殿は、今となってはスペインの世界遺産として観光名所となっているが、イスラム教徒らにとっては、まだこの地にイスラムの支配と信仰が残っていた頃の象徴的な建築物である。

グラナダの丘の建築群を目にするとき、日本人が城や古戦場などに悠久の歴史を感じるように、きっと彼らも亡き祖先の栄華と奮闘に思いをはせ、特別な思いを抱くことであろう。

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