春が呼んでるよ

ポーランド民謡『ヘイ・ムイ・ヤシネック(ヤシエンコ)』

『春が呼んでるよ』は、ポーランド民謡を原曲とする日本の子供向けの歌。NHK「みんなのうた」で1963年3月に初回放送された。

歌い出しの歌詞は「ひばりのこ すずめのこ 飛びながら 何を見た」。「ホーヨホヨヨ(オーイヨイヨイヨイヨイ)」のコーラスが印象的。2番の歌詞ではモグラとカエルが登場する。

原曲のポーランド民謡については、『Hej mój Jasinek』(ヘイ・ムイ・ヤシネック/わたしのヤシネック)、『Oj mój Jasieńko』(オイ・ムイ・ヤシエンコ/ああ私のヤシエンコ)、『Gdzie mój Jasieńko』(グヂェ・ムイ・ヤシエンコ/私のヤシネンコはどこに)など、曲名に様々なバリエーションが見られる。

【YouTube】『Gdzie mój Jasieńko』(私のヤシエンコはどこに)

曲名のポーランド語について

曲名で使われているポーランド語について若干補足すると、まず「mój」(ムイ)は英語の「my(マイ/私の)」と同じ。

Jasinek」(ヤシネック)または「Jasieńko」(ヤシエンコ)は、ポーランドの人名のようだ。「Jasinek」は「Jasieńko」の愛称、または訛りと推測される。

「春」をポーランド語へ翻訳してみると

日本語版のタイトル『春が呼んでるよ』との関連についてだが、試しに「春」という日本語を自動翻訳サイトで検索してるみと、Google翻訳では「wiosna」、babylon翻訳では「Sprężyna」、Glosbe翻訳では「wiosna」、「Sprężyna」という単語が表示された。

以上の結果、原曲のポーランド民謡の曲名には「春」の要素がまったく含まれていないことがわかるが、歌詞についてはどうだろうか?歌詞の内容について軽く比較してみよう。

歌詞の内容について

まず、日本語版『春が呼んでるよ』の歌詞では、タイトルどおり「春」の自然がメインに描写されている。

春の爽やかで明るいイメージと、『春が呼んでるよ』の物悲しいメロディは、若干の違和感というか異質な感覚があるが、ロシアに蹂躙されたポーランドの悲しい歴史(参照:ポーランド国歌)がきっとそうさせるのだろうと無理に解釈してみるのも面白いだろう。

次に、原曲のポーランド民謡の歌詞だが、私の見た限りでは、日本語版『春が呼んでるよ』のような朗らかな春の描写はまったくなく、農村の男女の悲しげな物語が淡々とつづられていた。

合唱団とちの実による訳詞では、「種子をまく若者が こちら向いて手を振るよ オーイヨイ ヨーオイヨイ」という歌詞があるが、この「種をまく」という要素が、原曲のポーランド民謡と内容と最も近い。

地方の古い訛りが混じったポーランド語を翻訳するのは難しく、納得のいく日本語訳ができなかったが、おそらく原曲の内容の大筋は、「農村の男女の悲しげな物語」という線で大きな間違いはなさそうだ。

日本の歌謡曲とメロディがそっくり?

完全に余談になるが、ポーランド民謡『春が呼んでるよ』のメロディは、日本の歌謡曲『想い出まくら』と全体的に曲調がよく似ている。

『想い出まくら』とは、ヤマハ・ポプコン出身の女性シンガーソングライター小坂 恭子(こさか きょうこ、/1953-)による1975年のヒット曲(ミリオンセラー)。

歌い出しの「こんな日はあの人の まねをして」のメロディが『春が呼んでるよ』のそれとよく似ており、サビの「ねえあなた ここに来て 楽しかった ことなんか 話してよ」も「ホーヨホヨヨ(オーイヨイヨイヨイヨイ)」のコーラス部と雰囲気が近い。

【YouTube】小坂恭子「想い出まくら」

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