トルコ軍楽 メフテル 有名な曲
オスマン帝国とトルコ共和国で行われてきた伝統的な軍楽
「メフテル Mehter」は、トルコ(オスマン帝国)の伝統的な軍楽。「オスマン軍楽」、「トルコ軍楽」とも呼ばれる。
オスマン帝国は、現在のトルコ最大の都市イスタンブールを首都として栄えた広大な多民族帝国。スレイマン1世(在位1520-1566)の時代に最盛期を迎え、オーストリアのウィーンを包囲するなど、ヨーロッパ諸国へも脅威を与えた。
写真:メフテルを演奏するトルコ軍楽隊メフテルハーネ(出典:Wikipedia)
オスマン帝国の軍楽隊メフテルハーネはヨーロッパ遠征にも随行し、メフテル(オスマン軍楽)の独特のリズムと旋律は、モーツァルトやベートーヴェンなど当時の作曲家達にも大きな影響を与えた。
有名な曲
- ジェッディン・デデン(祖先も祖父も)
- 日本で最も知名度が高いと思われるメフテルの名曲
- 若いオスマン(若きオスマン)
- 東ローマ帝国を滅亡させた「若きオスマン」メフメト2世
使われる楽器は?
メフテルで使われる楽器としては、ダブルリード型の木管楽器ズルナ(zurna)、ラッパに似た管楽器ボル(boru)、打楽器・太鼓のダウル(davul)やナッカーレ( nakkare)、シンバルの原型ともいえる鳴り物のズィルなどがある。
中でも最も重要な楽器は、やはりチャルメラのような特徴的な音色のズルナだろう。下の写真はズルナの演奏風景。手前の紺色の衣装をまとった奏者がズルナを吹いている。
写真:ズルナ奏者(紺色の衣装)出典:Wikipedia
ズルナは、現在のオーケストラにおけるオーボエやバスーン(ファゴット)の原型とされ、下方部はクラリネットと同様に円錐形状に拡がっている。
ズルナと大太鼓ダウルのみという最小構成で演奏されることもあり、メフテルにとって必要不可欠な楽器と言える。
トルコ軍楽に影響を受けたクラシック音楽
オスマン帝国は幾度となく中央ヨーロッパへ進軍し、その際に軍楽隊メフテルハーネを随行させた。特にオーストリアの首都ウィーンを大軍で包囲した二度の「ウィーン包囲」はヨーロッパの音楽家らに大きな影響を与えた。
トルコ軍楽メフテルに影響を受けたクラシック音楽の作品としては、ベートーヴェンやモーツァルトが作曲した『トルコ行進曲』が特に有名。
写真:メフテルを演奏するメフテルハーネ(出典:Wikipedia)
なお、メフテルはその後ヨーロッパ諸国における軍楽隊のモデルとなり、今日の吹奏楽・ブラスバンドの基本構成にもその影響が垣間見られる。
トルコ関連ページ
- モーツァルト『トルコ行進曲』
- ピアノ・ソナタ第11番イ長調 K331 第3楽章
- ベートーヴェン『トルコ行進曲』
- ベートーヴェンの劇付随音楽『アテネの廃墟』の一曲。ピアノ変奏曲作品76の主題が転用されている。
トルコ軍楽隊が訪問する串本町
和歌山県串本町には、来日したトルコ軍楽隊や留学生、外交官らが訪問する慰霊碑が存在する。
19世紀末、串本町付近で遭難したトルコ使節団のフリゲート艦エルトゥールル号乗組員を弔うために建立されたものだ。
多くの犠牲者を出した悲しい事件ではあったが、当時の串本町の住民が献身的な救助活動を行い、その後の日本・トルコ友好関係の礎として今日まで語り継がれている。
「エルトゥールル号遭難事件」の詳細は、トルコ国歌の解説を参照されたい。
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