といちんさ 歌詞の意味 五箇山民謡
樋(とい)のそばで遊ぶ小鳥のミソサザイ「サイチン」が語源
『といちんさ』とは、富山県・五箇山(ごかやま)地方で歌われる伝統的な民謡。『こきりこ節』、『麦屋節(むぎやぶし)』と並んで、五箇山を代表する民謡として歌い継がれている。
五箇山地方では、小鳥のミソサザイは「サイチン」と呼ばれ、水を流す樋(とい)のそばでサイチンが遊んでいる様子が「トイのサイチン」であり、これが訛って「といちんさ」となったと一般的に説明される。
「といちんさ(トイのサイチン)」のように機敏に働く娘になるように、との母親の願いが込められているという。手踊りにも小鳥の仕草を思わせる動きが見られる。
写真:ミソサザイ(出典:Wikipedia)
ミソサザイは、スズメ目ミソサザイ科ミソサザイ属に分類される鳥類の1種。常に短い尾羽を立てて、上下左右に小刻みに震わせている。
早春の2月頃から鳴き始め、高音の良く響く声で「チリリリリ」とさえずり、地鳴きでは「チャッチャッ」とも鳴く。
【YouTube】 五箇山民謡 といちんさ
歌詞の一例
樋(とい)のサイチン
機(はた)織る音に
ア トイチン トイチン
トイチンサ
ヤーサレーチ トーチレーチ
トイチンサ トイチンサ
拍子そろえて
サーサ うたいだす
ア ヤレカケ はやせよ
トイチンサ
トイチンレーチ
ヤーサレーチ
トイチンサ トイチンサ
<以下、唄ばやし・囃子詞(はやしことば)部分を省略>
わしがナー 若いときゃ
五尺の袖で
道のナー 小草も
サーサ なびかせた
鳥がナー うたえば
早や夜も明けて
紙屋ナー のぞきの
サーサ 窓もはる
声はナー かれても
まだ気は枯れぬ
藤のナー 花咲く
サーサ ほととぎす
来いナー と言われて
手で招かれず
笹のナー 五十竹(いささ)の
サーサ 葉で招く
歌詞の意味
『といちんさ』の歌詞の意味を解釈するには、誰の視点から描写された歌詞なのかを最初に明確にしておくと分かりやすい。
様々な解釈はあるだろうが、「若い娘を持つ母親」の視点で解釈してみると、若い頃はモテていたのよと娘に自慢する母親の姿が浮かび上がってくる。
「わしが若いときゃ 五尺の袖で 道の小草も なびかせた」とは、母親が若い頃、短い袖で肌を出して歩いたら、道行く男の視線はみな母親にくぎ付けだった、といった意味合いになるだろう。
「紙屋 のぞきの 窓をはる」とは、母親が若い頃、男たちが夜にこっそり庭先にやって来て、障子紙に穴をあけて家の中を覗き見をするので、翌朝に障子紙を張り替える必要があった、という内容に解釈できる。つまりそれだけモテていたということ。
関連ページ
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