別れの歌 ムシデン Muss i den

愛しい君よ 僕が帰ってきたら 結婚式を挙げよう

『別れの歌 ムシデン』は、ドイツ南部シュヴァーベン地方に伝わる民謡。メロディは、ドイツ歌曲『ローレライ』で知られるジルヒャーが採譜したもの。邦題は「別れ」または「わかれ」など。

原曲のタイトルは『Muß i denn (Muss i den)』または『Abschied』。前者のタイトルをあえてカタカナ表記にすると「ムスィデン」となり、さらに日本語的な発音で「ムシデン」となるが、この「ムシデン」が日本における同曲の題名として定着している。

【YouTube】ドイツ軍行進曲 Muss i denn ムシデン(歌唱つき)

【YouTube】Elvis Presley - Wooden Heart (1960)

歌詞の意味・日本語訳(意訳)

1.
Muß i denn, muß i denn
Zum Städtele hinaus,
Städtele hinaus
Und du, mein Schatz, bleibst hier
Wenn i komm', wenn i komm',
Wenn i wiederum komm', wiederum komm',
Kehr i ei' mei' Schatz bei dir

僕は町を離れねばならない
ここに残る愛しい君
僕が戻ってきたら
恋人よ 君に会いに行くよ

Kann i glei' net allweil bei dir sei'
Han' i doch mei' Freud' an dir
Wenn i komm', wenn i komm',
Wenn i wiederum komm', wiederum komm',
Kehr' i ei' mei' Schatz bei dir.

君のそばにはいられないけど
僕の幸せは君次第なんだ
僕が戻ってきたら
恋人よ 君に会いに行くよ

2.
Wie du weinst, wie du weinst,
Daß i wandere muß,
Wandere muß,
Wie wenn d'Lieb jetzt wär vorbei
Sind au' drauß, sind au' drauß,
Der Mädele viel, Mädele viel
Lieber Schatz, i bleib dir treu.

旅に出る僕に 君は涙する
まるで愛が失われるかのように
行く先には娘も多いけど
愛しい君よ 僕は君ひとすじ

Denk du nett wenn i a and're seh
No sei mei Lieb' vorbei
Sind au' drauß, sind au' drauß,
Der Mädele viel, Mädele viel
Lieber Schatz, i bleib dir treu.

他の娘に会っても
君への愛は変わらないから
行く先には娘も多いけど
愛しい君よ 僕は君ひとすじ

3.
Übers Jahr, übers Jahr,
Wenn mer Träubele schneidt,
Träubele schneidt,
Stell i hier mi' wiedrum ei'
Bin i dann, bin i dann,
Dei' Schätzele no', Schätzele no'
So soll die Hochzeit sei.

時が過ぎたら
ブドウを摘んで
また戻ってくるから
そのとき僕が まだ君の愛しい人なら
結婚式を挙げよう

Übers Jahr do ischt mei' Zeit vorbei
Do g'hör i mei und dei
Bin i dann, bin i dann,
Dei' Schätzele no', Schätzele no'
So soll die Hochzeit sei.

時が過ぎて修行が終われば
僕は君のもの
そのとき僕が まだ君の愛しい人なら
結婚式を挙げよう

歌詞の内容は?

歌詞の内容は、職人修行の旅に出る若者と、しばしの別れを告げられ涙する恋人とのやりとりを、若者の視点から描写した恋の歌となっている。

「旅から帰って来た時、まだ君が僕を好きなら結婚式を挙げよう」とのプロポーズで恋の歌は締めくくられる。

エルヴィス・プレスリーもカヴァー

19世紀アメリカの国民的歌手エルヴィス・プレスリー (Elvis Aron Presley/1935-1977)は、アルバム「GIブルース」の収録曲『Wooden Heart(邦題:さらばふるさと)』として、『別れの歌 ムシデン』をカヴァーしている。

前半は英語、後半は原曲のドイツ語で歌われ、英語版の歌詞は、「僕のハートは木じゃないから、君にさよなら言われたら泣いちゃうよ、死んじゃうかもよ」といった内容。

ちなみに、邦題は「さらばふるさと」とあるが、サビで「さらば故郷」と連呼するのはドイツ民謡『故郷を離るる歌 Der letzte Abend』。

『Wooden Heart(さらばふるさと)』収録ベストアルバム

ドイツ軍歌・行進曲として

日本ではドイツ民謡としての印象が強い『別れの歌 ムシデン』だが、本国ドイツでは、ドイツ軍の軍歌・行進曲として同曲が演奏される機会が多い。

原曲では職人修行が別れの理由だったが、軍歌としてはもちろん戦地への出兵が念頭に置かれるのだろう。なお、軍歌として歌われる場合は1番の歌詞までが一般的と思われる(若干歌詞も異なる)。

映画「Uボート」の出航シーンでBGMに使われたほか、実際のドイツ海軍でも艦船の出港時に演奏される機会があるという。

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