リリー・マルレーン Lili Marleen

戦場の兵士たちはラジオに聴き入り 故郷を懐かしんで涙した

『リリー・マルレーン Lili Marleen』は、第二次世界大戦中の兵士らの間で大流行したドイツの歌謡曲・行進曲

ドイツ軍によるラジオ放送で『リリー・マルレーン』が流れると、戦場の兵士たちはラジオから流れる音楽に聴き入り、故郷を懐かしんで涙したという。

ララ・アンデルセン

やがて『リリー・マルレーン』は連合軍の兵士たちにも広まり、北アフリカ戦線のイギリス軍司令部は同曲が流れるドイツ軍の放送を聞くことを禁じていたそうだ。

1939年に『リリー・マルレーン』をレコーディングしたドイツの女優・歌手ララ・アンデルセン(Lale Andersen/1905-1972)(上写真)の自伝によれば、訳者によるあとがきで、当時の流行ぶりについて次のような解説がなされている。

行進曲としては使いものにならないこのララの歌が、ベオグラード放送のプログラムの最後に、アフリカの砂漠にひびきわたると、両軍の武器はともに鳴りをひそめ、数分間は戦争が忘れられて、敵も味方もひとしく故郷のことを夢見たのであった。

<引用:ララ・アンデルセン「リリー・マルレーン:歌手ララの愛と人生」辻優子訳/中央公論社 1981年

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歌詞の意味・和訳

作詞:ハンス・ライプ(Hans Leip/1893–1983)

Vor der Kaserne
Vor dem großen Tor
Stand eine Laterne
Und steht sie noch davor


So woll'n wir uns da wieder seh'n
Bei der Laterne wollen wir steh'n
|: Wie einst Lili Marleen. :|

兵舎の大きな門の前に
街灯が立っていたね
今もあるのなら
そこでまた会おう
街灯のそば 僕らは一つ
リリー・マルレーン

Unsere beide Schatten
Sah'n wie einer aus
Daß wir so lieb uns hatten
Das sah man gleich daraus

Und alle Leute soll'n es seh'n
Wenn wir bei der Laterne steh'n
|: Wie einst Lili Marleen. :|

二人の影が重なり
一つに溶けていく
愛しあっていた僕ら
ひと目で分かるほどに
街灯のそば 僕らは一つ
リリー・マルレーン

最初はまったく売れなかった

大戦中の流行歌となった『リリー・マルレーン』だが、リリース当初から人気が出ていたわけではなかった。1939年の発売当時は数十枚しか売れず、売れ残りのレコードに埋もれて世の中から忘れ去られてしまう可能性すらあった。

しかしある時、運命の歯車が動き出す。前線のドイツ軍兵士を慰問するための担当将校が、兵士らに聞かせるレコードを選ぼうと、ベルリンはライプツィヒ街にあるレコード店を訪れた。

将校はレコード店主にまとまった金を渡し、慰問に用いるレコードを200枚、店主の自由な裁量で選ばせたという。

売れ残りのレコードを処分する絶好の機会とばかりに、店主は嬉々として売れ行きの悪いレコードを次々と選んで行った。その中の一曲に含まれていたのが、後の流行歌『リリー・マルレーン』だった。

話しによれば、『リリー・マルレーン』のレコードはどさくさに紛れて2枚も含まれていたという。そのうちの1枚が前線のラジオ放送局に持ち込まれ、後の爆発的ヒットにつながっていったということだ。

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