Water Lilies
ウォーター・リリーズ(睡蓮・スイレン)

『琵琶湖周航の歌』の原曲『ひつじぐさ』歌詞のルーツ

琵琶湖周航の歌』の原曲『ひつじぐさ』の歌詞のルーツであるイギリスの詩・ポエム「Water Lilies ウォーター・リリーズ」(睡蓮・スイレン)について、原詩と訳詞、そして作者についての仮説など、簡単にまとめてみたい。

まずは「Water Lilies」の原詩と、それを吉田千秋が1915年(大正4年)頃に訳詞した『ひつじぐさ』の歌詞を対応させたうえで、次のとおり掲載する。

『Water Lilies』訳詞:吉田千秋

Misty moonlight, faintly falling
O'er the lake at eventide, 
Shows a thousand gleaming lilies
On the rippling waters wide.

おぼろ月夜の 月明かり
かすかに池の面(おも)に落ち
波間に浮かぶ数知らぬ
ひつじぐさをぞ照らすなる

White as snow, the circling petals
Cluster round earch golden star,
rising, falling with the waters, 
Moving, yet at rest they are.

雪かとまがふ 花びらは
黄金の蕊(しべ)を取り巻きつ
波のまにまに揺るげども
花の心は波立たず

Winds may blow, and skies may darken, 
Rain may pour, and waves may swell; 
Deep beneath the changeful eddies
Lilies roots are fastened well.

風吹かば吹け 空曇れ
雨降れ 波立て さりながら
あだなみの下底深く
生えいでたりぬ ひつじぐさ

原詩の作者は「E. R. B.」?

『Water Lilies』の作者についてネットで検索してみると、いくつかのWebサイトで「E. R. B.」というキーワードが散見された。

「E. R. B.」は一体何の略なのだろうか?人名か?それとも組織名なのか?

この点についてあるWebサイトでは「Education & Resettlement Bureau」と併記されており、これが正しければ、「E. R. B.」は何らかの組織名ということになる。

組織名を作者とする方式は、日本の明治期の「文部省唱歌」と同じような形式であり、特段おかしなことではない。

しかし、組織としての「E. R. B.」について詳しく調べてみようと試みたが、ネットではまったく情報が得られなかった。

本当に「E. R. B.」は組織名なのか?人名の可能性はないのだろうか?

もっとはっきり言えば、「E. R. B.」はイギリスの詩人なのではないか?という疑問がふつふつと湧き上がってくる。

当サイトでは、「E. R. B.」が誰なのかについて、次のような仮説を立ててみた。

E. R. B. = 初代リットン伯爵?

「E. R. B.」に該当するイギリスの詩人として、初代リットン伯爵エドワード・ロバート・ブルワー=リットン(Edward Robert Lytton Bulwer-Lytton, 1st Earl of Lytton/1831-1891)を有力候補として挙げてみたい。

彼の名は、J. S. バッハのように頭文字で省略すると「E. R. B. Lytton」となる。以下、「E. R. B. リットン」と表記する。

リットンといえば、日本では満州事変後のリットン調査団が有名だが、その団長のヴィクター・ブルワー=リットンは「E. R. B. リットン」の息子である。

「E. R. B. リットン」は「Owen Meredith」のペンネームで詩人としても活躍しており、英語版ウィキペディアによれば、当時彼のポエムはかなり人気があったという。

19世紀イギリスの詩人で「E. R. B. 」といえば彼しかいない(と思われる)ので、おそらく人名だとしたら「E. R. B. リットン」を指しているものと推測されるが、この仮説を客観的資料で裏付けるのはかなり困難かもしれない。

ちなみに、「E. R. B. リットン」の父親は、「ペンは剣よりも強し "The pen is mightier than the sword”」の文句で有名な戯曲『リシュリュー』(Richelieu; Or the Conspiracy)の作者である小説家の初代リットン男爵エドワード・ジョージ・アール・リットン・ブルワー=リットン( Edward George Earle Lytton Bulwer-Lytton, 1st Baron Lytton/1803-1873)。

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琵琶湖周航の歌
「Water Lilies ウォーター・リリーズ」を訳詞した『ひつじぐさ』がメロディの原曲
ひつじぐさ
「Water Lilies ウォーター・リリーズ」をほぼ忠実に訳詞