この広い野原いっぱい 歌詞の由来 森山良子

黒澤明の息子の影響で成城学園高校時代に作曲したデビューシングル

『この広い野原いっぱい』は、当時19歳の森山良子が1967年1月にリリースしたデビューシングル。

中学校などの音楽教科書によく掲載される。プレイステーション用ゲーム「ぼくのなつやすみ」エンディング曲にも使われた(歌は女性歌手の大藤史)。

森山良子 ベスト盤

ジャケット写真:森山良子 ベスト盤

森山良子が通っていた高校は、多くの芸能人や大金持ちの子息が入学する日本屈指の私立一貫校「成城学園高等学校」。

2年上の先輩だった黒澤明の息子・黒澤久雄の影響で、当時高校生の森山良子は友人らとフォークグループを結成していた。

さらに森山良子のいとこ(従兄)は、彼女の高校時代に人気があったザ・スパイダース(堺正章ら)のメンバーかまやつ ひろし(ムッシュかまやつ)であり、従兄の影響も大きかっただろう。

芸能界における強力なコネと後ろ盾を得て、高校生の森山良子が作曲した『この広い野原いっぱい』はラジオ番組で放送され話題に。

森山良子は高校卒業後、黒澤プロダクション所属のソロ歌手として、『この広い野原いっぱい』でレコードデビューを果たした。

【YouTube】 この広い野原いっぱい 森山良子

歌詞の元ネタ 高校生が銀座の画廊で?

さてここからは、作詞:小薗江圭子による『この広い野原いっぱい』の歌詞を次のとおり引用して、その歌詞に関連するエピソードについて解説してみたい。

この広い野原いっぱい 咲く花を
ひとつ残らず あなたにあげる
赤いリボンの 花束にして

この広い夜空いっぱい 咲く星を
ひとつ残らず あなたにあげる
虹にかがやく ガラスにつめて

この広い海いっぱい 咲く船を
ひとつ残らず あなたにあげる
青い帆に イニシャルつけて

この広い世界中の なにもかも
ひとつ残らず あなたにあげる
だからわたしに 手紙を書いて
手紙を書いて

『この広い野原いっぱい』の歌詞については、森山良子が高校生の時、たまたま訪れた銀座の画廊にあったスケッチブックに印刷された詩が元になっているという。

高校生がたまたま銀座の画廊を訪れるという、一般庶民にはあまり考えられない優雅なエピソードは、さすが上流階級の御子息らが集う成城学園高校の生徒さんといった感じだ。

作詞者:小薗江圭子は、NHK「みんなのうた」で放送された『うちのネコ ぼくのネコ』や、アニメ「魔法使いチャッピー」主題歌『魔法のワルツ』などの歌詞を手がけた作詞家・文筆家。

彼女は、銀座の画廊のスケッチブックに印刷された元ネタの詩の作者とは別人。

元ネタの作者(権利者)とどのような話し合いが行われたのかは不明だが、現在では小薗江圭子のみが作詞者としてJASRAC(音楽著作権協会)に登録されている。

上掲した歌詞のうち、銀座の画廊にあったスケッチブックの詩にどの程度基づいているのかも不明だが、歌詞が4番まであるので、小薗江圭子により追加された要素の方が大きいのだろう。

元の作詞者は高橋兵蔵?

ウィキペディアで『この広い野原いっぱい』を確認してみると、歌詞の作詞者について、次のような大変興味深い記述が確認できた。

1967年のレコード盤では、作詩者は高橋兵蔵となっている。

注釈でさらっと記述されていたが、筆者の直感では、実はこれは大変な事実なのではないかと考えている。

この「高橋兵蔵」とは一体どのような経歴を持つ人物なのだろうか?

ネットで検索して調べてみたが、「高橋兵蔵」に該当する情報がまったく見つからない。これはペンネームと考えるのが妥当だろう。江戸時代に同姓同名の代官が実在していたようだ。

おそらく、銀座の画廊にあったスケッチブックに印刷されていた詩の作者と何らかの関係にある人物(本人?)と思われるが、現在では「高橋兵蔵」に関する情報は闇に葬られている。

みんなのうた以降に変更?

NHK「みんなのうた」では、1974年4月に『この広い野原いっぱい』が初回放送されているが、そこでの作詞者は現在と同じ「小薗江圭子」と表記されている。

1967年のレコードでは「高橋兵蔵」だった作詞者が、7年後のNHK「みんなのうた」では「小薗江圭子」に変更されていたのだ。

NHK「みんなのうた」で放送される以前に既に変更されていたのだろうか?それとも同番組での放送をきっかけに変更されたのだろうか?

思うに、筆者の推測では、恐らくはNHK「みんなのうた」での『この広い野原いっぱい』テレビ放送及び出版に際し、権利・ライセンス関係における何らかの不都合が生じたため、新たな作詞者に歌詞の権利を移譲する話し合いが当事者間で行われたのではないだろうか?

天下のNHKが「みんなのうた」で放送する楽曲が、銀座の画廊のスケッチブックに印刷された詩が元ネタでは、将来権利関係で揉めて足元をすくわれる可能性が否めない。

そこで、放送するコンテンツのライセンスに万全を期すため、当事者間できっちりとビジネス上の話し合いがつけられた可能性が考えられるそうだ。

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