ジャコバイト Jacobite
スコットランドの歴史
ジャコバイト(Jacobite)とは、1688年頃の名誉革命でイングランドの王位から追放されたジェームズ2世を擁護する勢力の通称。語源はジェームズのラテン名(Jacobus)。
ジェームズ2世のステュアート家はスコットランド系であり、ジャコバイト最大の支持勢力は、ハイランド地方を中心とするスコットランド人だった。
挿絵は、1746年4月16日にジャコバイトとイングランド軍が戦ったカロデンの戦い(Battle of Culloden)。左側がジャコバイトの軍勢。
イギリス国歌の歌詞にも
このジャコバイトとの対立の様子は、イギリス国歌『God Save the Queen』6番(6節)の歌詞「Rebellious Scots to crush 反逆スコットランド人を壊滅させよ」にも表れている。
今日ではこの6番の歌詞が歌われることはほとんどないが、国歌の歌詞としては現在まで廃止されることなく存続している。
あの曲もジャコバイト関連だった?
イングランドとジャコバイトとの争いが垣間見える歌としては、他にもスコットランド民謡『ロッホ・ローモンド』、同じくスコットランド民謡『マイボニー』、ヘンデル作曲『見よ、勇者は帰る』の3曲が日本でも有名。
『ロッホ・ローモンド』では、サビのコーラス部分で、イングランド軍との戦いで亡くなったスコットランド兵の熱い叫びが暗に示されている(右写真:ローモンド湖)。
ビートルズのカバーで有名な『マイボニー』は、追放されたジェームズ2世の孫で、最後までイングランドに徹底抗戦をしかけたボニー・プリンス・チャーリーが歌詞の中で暗示されているように解釈できる。
ヘンデルとジャコバイト
ヘンデル『見よ、勇者は帰る』は、運動会や競技会の表彰式のBGMとして有名な曲。この「勇者」とは、ジャコバイトとの大きな戦いに勝利したイングランド軍を指している。
また、カロデンの戦いが起きる1年前の1745年9月、当時はジャコバイトによる内戦状態だったが、トマス・アーンがイギリス国歌『God Save the Queen(King)』を編曲し初演を行うと、イギリス国内の愛国心と士気は非常に高まったという。イングランド政府軍の勝利における影の立役者と言えるかもしれない。
これら3曲およびイギリス国歌を改めて「ジャコバイト対イングランド」というテーマから見直してみると、スコットランドとイギリスの歴史的な対立関係が垣間見えて、比重に興味深い。
その他のスコットランド民謡については、こちらの特集ページ「有名なスコットランド民謡 歌詞と解説・視聴」を参照されたい。
関連ページ
- イギリス国歌『God Save the Queen』
- 歌詞の一部ではジャコバイトとの戦いについても言及している
- スコットランド国歌『フラワー・オブ・スコットランド Flower of Scotland』
- スコットランドのフォークグループ「The Corries(ザ・コリーズ)」による楽曲