おけさ 意味・語源・由来
猫の恩返し?娘の名前? 諸説入り乱れるルーツまとめ
『佐渡おけさ』や『チャンチキおけさ』など、新潟県民謡や民謡風歌謡などの曲名にある「おけさ」については、その意味や語源・由来について諸説入り乱れている。
大きく分けると、1.猫が化けた娘の名前、2.人間の娘の名前(美声が多い)、3.その他、の三つに分類できる。さらに大雑把に言えば、娘の名前かそれ以外という二つに分けられる。
このページでは、「おけさ」の意味・語源・由来について、上述の3つの分類に従って、主な説を簡単にまとめてみたい。
1.猫が化けた美女
「おけさ」の語源・由来としてよく紹介されるのは、飼い猫の主人が経済的に困窮し、それを助けるために猫が美女に化けるという「猫の恩返し」のストーリー。
猫が化けた美女の名前は「おけさ」、「お桂(けい)」など。唄や踊りが上手く、彼女が歌っていた歌が「おけさ節」、「おけいさん節」と呼ばれ、「おけさ」の語源となったと説明される。
猫が化けた美女のおかげでお店が繁盛するなど、猫の飼い主は経済的に救われる結末となる。
実際、『おけさ』の歌詞には、美女に化けた猫に関連して次のようなくだりがある。
おけさ正直なら そばへも寝しょが
おけさ猫の性で じゃれたがる
新潟の港には、水揚げされた魚を求める野良猫や飼い猫が昔からたくさんいたのだろうか。主人想いの献身的な「猫の恩返し」の逸話は新潟各地に伝えられている。
2.人間の娘の名前
普通の人間の娘が「おけさ」の語源・由来として説明されるパターンもいくつかあるようだ。
写真:喜多川歌麿の美人画「ポッピンを吹く女」(出典:Wikipedia)
例えば、美声姉妹の千代と今朝(けさ)がいて、姉の唄は「お千代節」、妹は「お今朝節(おけさぶし)」と呼ばれたとする説がある。
これに関連して次のような「おけさ節」の歌詞が伝えられている。
お千代お千代と 皆おしやまれども
お千代ばかりが おんなじゃか
この他にも、機織り娘の「おけい」や、遊女の「おけさ」、女芸人の「おけさ」など、女性の名前が「おけさ」の語源・由来と説明する伝承は数多く残されている。
3.その他の語源・由来
さてここからは、人名以外の事柄に基づく「おけさ」の語源・由来について簡単にまとめていく。
ここでは、乙和御前の袈裟(けさ)、桶屋の佐助(おけやのさすけ)、起きろ、の三つの説と取り上げてみたい。
3-1.乙和御前の袈裟(けさ)
平安時代末期、源義経の家臣・佐藤継信は、弟・忠信と共に義経に随行し、屋島の戦いで兄弟ともに討ち死にした。
兄弟の母・乙和御前(音羽御前)は尼僧となり、二人の菩提を弔らった。乙和御前は袈裟法衣のままで唄い踊ったことから、 「袈裟」が「けさ」、そして「おけさ」となったという。
3-2.桶屋の佐助
桶屋を営んでいた佐助という男がいた。佐助は美声で知られ、佐助がふいごを押しながら唄い始めた「ふいご唄」は広く知られていた。
桶屋の佐助の「ふいご唄」は『桶佐節(おけさぶし)』と呼ばれ、これが「おけさ」の語源・由来となっているという。
3-3.起きろ
佐渡の港町・小木(おぎ)の宿屋では、早朝に船で出発する宿泊客を起こすために『起きろ節』という歌を歌っていたという。
この『起きろ節』が転化して「おけさ節」になったと説明される。
最後に
「おけさ」の語源・由来については、このページで取り上げた説以外にも多数の説明が存在している。
現時点ではどれも決定的ではない。民謡研究者らによる今後の更なる研究が待たれる。
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