美しきロスマリン クライスラー

フルートやチェロ、クラリネットなど様々な楽器で演奏される名曲

『美しきロスマリン Schön Rosmarin』は、オーストリア出身の音楽家フリッツ・クライスラー(Fritz Kreisler/1875-1962)によるヴァイオリンとピアノのための小作品。

ヴァイオリンだけでなく、フルートやチェロ、クラリネットなどでも演奏される。

「ロスマリン」とは、ハーブとして有名なローズマリー(rosemary)のこと(上写真)。属名Rosmarinus(ロスマリヌス)は「海のしずく」を意味する。

イングランド民謡『スカボローフェア Scarborough Fair』でも、パセリやセージと並んで、歌詞にローズマリーが登場する。

なお、クライスラー『美しきロスマリン』においては、ロスマリンは花の名前というよりも、むしろ美しい女性、愛らしい女性の象徴として用いられているようだ。

【YouTube】ヴァイオリン演奏による『美しきロスマリン』

【YouTube】フルート演奏による『美しきロスマリン』

クライスラー愛の三部作

クライスラーの有名な作品といえば、この『美しきロスマリン』以外にも、同じくヴァイオリンとピアノのための楽曲である『愛の喜び』、『愛の悲しみ』が広く知られている。

クライスラーは、これら3曲を自身のコンサートでのアンコール曲として頻繁に演奏していたほか、1911年に3曲をピアノソロに編曲した「ウィーン古典舞曲集 Alt-Wiener Tanzweisen」を出版している。

これらのことから、現代でもこの3作品はアンコール曲として演奏されるほか、3曲を一連の作品として取り上げる機会も少なくない。

ちなみに、『愛の喜び Liebesfreud』の英語タイトルは『Love's Joy』、『愛の悲しみ Liebesleid』は『Love's Sorrow』、そして『美しきロスマリン』は『Lovely Rosemary』(ラブリー・ローズマリー)となる。

つまり、これら3曲で「ラブ・ラブ・ラブ」の愛の三部作として位置付けることができそうだ。

バレエ・レッスン音楽にも

英国ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス(RAD) から発売されているバレエ・レッスン用ピアノ曲集には、バレエにおける基本的な回転動作「ピルエット」用の曲として、この『美しきロスマリン』が収録されている。

写真は、ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス バレエ・レッスン曲集「Can’t stop dancing」Vol.4

バレエ経験者であれば、レッスン時に『美しきロスマリン』を使っていたという方も少なくないのではないだろうか?

最初は偽名で発表された?

ウィキペディア英語版の解説によれば、『美しきロスマリン』、『愛の喜び』そして『愛の悲しみ』の3作品は初演当時、クライスラー作曲の作品としてではなく、オーストリアの音楽家ヨーゼフ・ランナー(Joseph Lanner/1801-1843)の作品(の編曲)として発表されていた。

ヨーゼフ・ランナーといえば、ヨハン・シュトラウス一家に先立ってウィンナ・ワルツの様式を確立させた「ワルツの始祖」とも言うべき名作曲家。

一体なぜ、クライスラーほどの高い技術を持ったヴァイオリニストがこれほどの「偽作」を行わなければならなかったのか?

その意味・理由・動機については、諸説をこちらのページ「クライスラーの偽作 意味・理由は?」でまとめている。

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