ホルスト 組曲『惑星 The Planets』
占星術から着想を得た壮大なテーマの管弦楽曲
『惑星 The Planets』は、イギリスの作曲家グスターヴ・ホルストを代表する管弦楽曲(作品32)。火星から海王星まで7つの楽章から構成される。
初演は1920年10月。当初はそれほどの知名度はなかったようだが、1961年頃にヘルベルト・フォン・カラヤンがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会で紹介したことにより一躍有名になった。
タイトルは「惑星」だが、天文学ではなく占星術から着想を得たもので、組曲のサブタイトルについても占星術的な副題「戦争をもたらす者」、「快楽をもたらす者」などが付されている。
最も有名なのが、第2曲「火星 マーズ(Mars)」および 第4曲「木星 ジュピター(Jupiter)」。特に「木星」第4主題は知名度が高く、イギリスでは愛国歌『I vow to thee, my country(我は汝に誓う、我が祖国よ)』として愛唱されている。
組曲「惑星」の構成一覧
- 火星、戦争をもたらす者 Mars, the Bringer of War
- 金星、平和をもたらす者 Venus, the Bringer of Peace
- 水星、翼のある使者 Mercury, the Winged Messenger
- 木星、快楽をもたらす者 Jupiter, the Bringer of Jollity
- 土星、老いをもたらす者 Saturn, the Bringer of Old Age
- 天王星、魔術師 Uranus, the Magician
- 海王星、神秘主義者 Neptune, the Mystic
関連アルバム
上ジャケット写真:カラヤン指揮 ホルスト 組曲「惑星」CD
惑星から除外された冥王星
組曲に冥王星が含まれていないのは、1916年の作曲当時には未発見だったため。1930年にアメリカの天文学者クライド・トンボー(Clyde William Tombaugh/1906-1997)により冥王星が発見されると、ホルストはさっそく作曲に取り掛かったものの、未完成のまま1934年に死去してしまった。
そこで他の作曲家達により新たに冥王星について楽曲を追加する動きが広まった。今日で最も有名なものがイギリス・ホルスト協会理事の作曲家コリン・マシューズによる「冥王星、再生する者」(Pluto, the renewer)。2000年5月に初演された。
ジャケット写真:ホルスト:組曲「惑星」(冥王星付き) SACD
しかし皮肉にも、2006年8月24日、国際天文学連合総会において冥王星が惑星から除外され、組曲「惑星」の曲目に冥王星がないことが特段問題とならなくなった。
ただ、この新定義のニュースにより冥王星付き「惑星」が注目を集め、サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏による「惑星(冥王星付き)」(東芝EMI)国内版(右上ジャケット)は、クラシック音楽としては異例の5日で1万枚のセールスを記録したという。
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