蘇民将来と牛頭天王 八坂神社の祭神
夏越の祓の神事「茅の輪くぐり」のルーツ
京都・八坂神社の祭神である神仏習合の神・牛頭天王(ごずてんのう)と、蘇民将来(そみんしょうらい)の説話について簡単にまとめてみた。
いずれも、毎年6月末に神社で行われる「夏越の祓(なごしのはらえ)」における「茅の輪くぐり」と関連性がある。合わせて参照されたい。
写真:蘇民将来の護符(信濃国分寺八日堂縁日/出典:gooブログ)
蘇民将来(そみんしょうらい)
奈良時代初期に編纂された備後国の風土記『備後国風土記』(びんごのくにふどき)には、牛頭天王の神話ともつながる伝承「蘇民将来(そみんしょうらい)」が残されている。
蘇民将来の内容については様々なバリエーションが存在するが、主なストーリー・あらすじは次のとおり。
ある時、武塔神(むとうのかみ)が旅の途中で一晩の宿を借りようとしたところ、裕福な弟の巨旦将来は断り、貧しい兄の蘇民将来は粗末ながらも武塔神をもてなした。
後日、武塔神は蘇民将来を再訪すると、自分の正体がスサノオ(速須佐雄能神)であると明かしたうえで、蘇民の娘に茅の輪を付けさせた。
そして、茅の輪を付けていれば疫病を避けることができると教えた。その後、茅の輪をつけていない将来の一族は滅んでしまったという。
挿絵:歌川国芳作「須佐之男命」一部抜粋(出典:Wikipedia)
スサノオは仏教の牛頭天王と習合
スサノオは後に、仏教における祇園精舎の守護神・牛頭天王と習合し同一視された(異説あり)。祇園精舎とは、釈迦が説法を行ったとされるインドの寺院のこと。
上述の蘇民将来の伝承は、宿を求めた神をスサノオから牛頭天王に入れ替えたような形で、ほぼ同じ物語が伝えられた。
牛頭天王は、蘇民将来の娘に対し、「茅の輪をつくって、赤絹の房を下げ、『蘇民将来之子孫也』(そみんしょうらいのしそんなり)との護符を付ければ、末代までも災難を逃れることができる」と除災の法を教示したという。
茅の輪くぐりのルーツに
蘇民将来の一族を救った茅の輪は、現在の日本で毎年6月30日の「夏越の祓(なごしのはらえ)」で実施される神事「茅の輪くぐり」のルーツと考えられている。
「茅の輪くぐり」では、スサノオ以外にも、イザナギ・イザナミの「国生み」「神生み」といった日本神話からも影響を受けているように思われる。
蘇民将来の護符
厄除けのご利益がある蘇民将来の護符は、紙や木のお札、角柱状のこけしなど、様々な形がある。
牛頭天王を祭神とする京都・八坂神社では、祇園祭の行われる7月、「蘇民将来之子孫也」と記した厄除粽(ちまき)が授与される。
また、八坂神社の夏越祭(なごしさい)では、蘇民将来の伝承に基づき、小さな茅の輪のお守り「茅之輪守」が授与される。
長野県上田市の信濃国分寺八日堂では、毎年1月7日から8日にかけて、六角柱のこけし型をした蘇民将来の護符が縁日に並ぶ。
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