重陽 ちょうよう 菊の節句 意味・由来
菊の咲く頃に菊酒を飲んで長寿を願う季節の行事
「重陽(ちょうよう)」は、陰暦9月9日に行われる年中行事。長寿を願って菊酒を飲んだり菊の花を飾ったりすることから「菊の節句」とも呼ばれる。
3月3日の「桃の節句」や5月5日の「端午の節句」と同じく中国由来の「五節句(ごせっく)」の一つで、年内最後の節句となる。
重陽(ちょうよう)とはどんな意味なのか?その由来は?簡単にまとめてみた。
合わせて、菊に関連する日本の歌を3曲ご紹介。
漢字の意味は?
陰暦の9月9日を「重陽」と書くのはなぜか?
中国の思想では、宇宙のありとあらゆる事物を「陰(いん)」と「陽(よう)」の二つに分類する陰陽思想があり、奇数は「陽」の数と考えらえている。
「九」という漢字は漢字1文字で書ける数字の中で最大の奇数であり、その最大の「陽」の気が重なる日という意味で、9月9日は「重陽」と呼ばれる。
長寿を祈る菊酒
中国では漢の時代から重陽の節句が祝われており、菊酒を飲み長寿を祈る習慣があったという。菊は漢方では体の無駄な熱を冷ますとされ、邪気を払い、不老長寿が得られるるとして珍重された。
三国志の時代である魏の初代皇帝・曹丕(そうひ/曹操の息子)は、幼時は非常に虚弱で長生できないと思われていたが、菊酒を飲んで強健となり魏の皇帝となったという民間伝承もあるようだ。
重陽の節句と長寿の菊酒の文化は、平安時代に日本へ伝わった。江戸時代には諸大名も菊酒で重陽の節句を祝うようになり、やがて庶民の間にも広まっていった。
写真:食用菊(出典:Wikipedia)
菊が咲く時期とズレている?
現代の暦で9月9日というと、キクの開花時期としてはまだ少し早い。菊の展覧会や菊まつりなども10月下旬から11月上旬にかけて開催されている。
この季節のズレは、明治初期に行われた暦の変更が原因となっている。陰暦の9月9日は、現代の新暦では10月中旬から下旬に該当する。
このような約1か月の時期的なズレは、正月と春節(旧正月)、月遅れの七夕やお盆などにも影響している。
敬老の日との関係も?
重陽・菊の節句と近い時期に行われる9月の祝日「敬老の日」は、時期が近いというだけではなく、「長寿を願う」という趣旨についても類似性が認められる。
「敬老の日」は、戦後に兵庫県の村で敬老会が行われた「としよりの日」がルーツとされるが、この「としよりの日」制定は養老の滝伝説がヒントになったという。
岐阜県の養老の滝には「菊水泉」と呼ばれる泉があり、酒香のする泉の水を老父に飲ませると若返ったという伝説が残されている。
菊の咲き始める時期には、こうした不老長寿的なキーワードを含んだ年中行事が多くなるようだ。
菊のうた
- 菊の花 土佐のお座敷遊び唄
- 明石家さんま『あみだくじの歌』原曲? 開けてうれしい菊の花♪
- 庭の千草 にわのちぐさ
- ああ白菊 ああ白菊 一人遅れて咲きにけり
- 野菊 のぎく
- やさしい野菊 うすむらさきよ
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