ラピュタ「40秒で支度しな」と
聖書・イースターとの関係とは?
キリスト教における「40」という数字の意味・位置づけについて
スタジオジブリの長編アニメ「天空の城ラピュタ」では、飛行船・タイガーモス号の女船長ドーラのセリフで、「40秒で支度しな」という有名なフレーズがある。
この「40秒」という時間については、深く考えずに聞くと何とも中途半端な印象を受ける長さだが、恐らく何らかの理由があってこの数字が選ばれたのだろう。
一体なぜ準備の時間に「40」という数字が用いられたのだろうか?「天空の城ラピュタ」では聖書に関するキーワードがいくつか散見されることから、同じように聖書との絡みで説明を試みることとしたい。
上ジャケット写真:天空の城ラピュタ サウンドトラック 飛行石の謎
旧約聖書と40
まず、旧約聖書で見られる「40」という数字について。モーゼ(モーセ)がユダヤ人を率いてエジプトから脱出する物語が描かれる「出エジプト記 Book of Exodus」では、モーセがシナイ山で40日間行った断食について、次のように記されている。
出エジプト記 34章28節
モーセは主と共に、四十日四十夜、そこにいたが、パンも食べず、水も飲まなかった。そして彼は契約の言葉、十誡を板の上に書いた。
また、旧約聖書におさめられた古代ユダヤの歴史書の1つ「列王記」では、預言者エリヤがホレブ山に40日間飲み食いせずに行ったことが次のように記されている。
列王記 19章8節
そこで、彼は起きて、食べ、そして飲み、この食べ物に力を得て、四十日四十夜、歩いて神の山ホレブに着いた。
新約聖書と40
次に、旧約聖書で見られる「40」という数字について。イエス・キリストとの関係ではこの新約聖書における記述がもっとも重要な「40」と言えるかもしれない。
新約聖書「マタイによる福音書」、「マルコによる福音書」、「ルカによる福音書」では、イエス・キリストが荒野で断食して過ごした40日間について、次のように記されている。
マタイによる福音書 4章1-2節
さて、イエスは御霊によって荒野に導かれた。悪魔に試みられるためである。
そして、四十日四十夜、断食をし、そののち空腹になられた。
マルコによる福音書 1章11-13節
すると天から声があった、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。
それからすぐに、御霊(みたま)がイエスを荒野に追いやった。
イエスは四十日のあいだ荒野にいて、サタンの試みにあわれた。そして獣もそこにいたが、御使(みつかい)たちはイエスに仕えていた。
ルカによる福音書 4章1-2節
さて、イエスは聖霊に満ちてヨルダン川から帰り、荒野を四十日のあいだ御霊にひきまわされて、悪魔の試みにあわれた。そのあいだ何も食べず、その日数がつきると、空腹になられた。
イースター(復活祭)と40日
聖書以外にも、キリスト教の宗教行事で「40」という数字を目にすることができる。
それは、イースター(復活祭)直前の40日間(日曜日を含めると46日間)に行われる「四旬節(しじゅんせつ)」と呼ばれる宗教行事。
四旬節では、イエス・キリストの復活を記念するイースターを迎えるにあたり、食品の品目や量を節制したり祈りを増やすなどして、肉体的・精神的な準備が行われる。
ラピュタ「40秒で支度しな」との関係は?
さてここで、復活祭の準備に40日間というキーワードと、アニメ「天空の城ラピュタ」のセリフ「40秒で支度しな」を照らし合わせてみよう。
ラピュタ王族の血を引くムスカ大佐は、古代ラピュタ帝国の復活を目論んでいた。そのためにさらわれたシータを救うべく、ドーラとラピュタへ乗り込まんとするパズー。ドーラが出発の準備に与えた時間は40秒。
「復活」、「準備」、「40」という数字がラピュタのストーリーの中から見事に抽出されていることが分かるだろう。
最後に
最後はかなり駆け足でラピュタとイースターをこじつけてみたが、「40」という数字がキリスト教と関連が深いことはお分かり頂けたであろう。
アニメ「天空の城ラピュタ」にはキリスト教関連のキーワードがいくつか登場するが、それはあくまでも言葉の持つイメージや雰囲気を借りて物語に深みを増すための小道具であり、本来の宗教用語とは意味や用法がかけ離れているが、それでもこうした本来の意味を改めて見直すことには一定の意義があると思われる。
なおイースターについては、重要なキーワードをこちらの特集ページ「イースター(復活祭)とは?」でまとめてあるので、ご興味のある方は是非お立ち寄り頂きたい。
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