たなばたさま 七夕様 歌詞の意味
笹の葉サラサラ 軒端に揺れる
童謡『たなばたさま』は、1941年(昭和16年)3月に文部省発行の「うたのほん 下」に掲載された唱歌。その歌詞の意味について簡単にまとめてみた。
歌詞『たなばたさま』 作詞:権藤はなよ
ささの葉さらさら
のきばにゆれる
お星さまきらきら
きんぎん砂子(すなご)
五しきのたんざく
わたしがかいた
お星さまきらきら
空からみてる
「のきば」の意味は?
一番の歌詞にある「のきば」とは、漢字で書くと「軒端」、つまり屋根の端で壁から張り出した部分を意味する。
日本の古い民家ではこうした軒端が設けられており、七夕の時期には軒端に笹飾りが飾られていた(写真:神奈川県大和市 郷土民家園の七夕飾り/出典:日々の暮らし あれこれ)。
砂子(すなご)の意味は?
一番の歌詞の最後に歌われる「金銀砂子(きんぎんすなご)」とは、金箔や銀箔を細かく砕いて、蒔絵や襖絵などを装飾するために使う粉(砂子)のこと。
『たなばたさま』の歌詞では、七夕の星空や天の川の砂などが表現されている。
ちなみに写真は、西陣織の伝統工芸士・吹上重雄氏による「箔のふきあげ」作業の様子。和紙に水性の糊を塗り、金箔や銀箔を容器(竹筒に金網を底につけたもの)に入れて刷毛で蒔き、砂子や切金を載せていく(出典:同氏のWebサイトより)。
五色(ごしき)の短冊とは?
二番の歌詞の冒頭に出てくる「五色の短冊」の「五色(ごしき)」とは、中国の五行説にあてはまる五色で、緑・赤(紅)・黄・白・黒をいう。実際の短冊では、黒は縁起が悪いので「紫」が用いられている。
こいのぼりの一番上に飾られる五色の吹き流しも、この「五色」とルーツが同じ。
ちなみに下の画像は、かつて七夕と近い時期に行われていた仏教行事「施餓鬼(せがき)」で用いられる施餓鬼旗(せがきばた)。
施餓鬼旗(せがきばた)の見た目は、七夕の短冊をほうふつとさせる。両者の関係についてはこちらのページ「施餓鬼旗と七夕の短冊 文字の意味・色の由来」を適宜参照されたい。
歌詞の音のつながりにも注目
『たなばたさま』の歌詞では、行末や句末で似た音を繰り返す頭韻や脚韻などの技法がちりばめられ、歌にリズム感や流動感・躍動感を生み出している。
例えば、「ささの葉 さらさら」では「さ」の音が繰り返され、さらに「さらさら」が「お星さまきらきら」の「きらきら」と脚韻を踏んでいる。
また、「きんぎん砂子(すなご)」の「ご」と、「五色(ごしき)の短冊」の「ご」が同じ音なのも偶然の一致ではなく、作詞者が意識して音をそろえたものだという。
こうした頭韻や脚韻は、イギリス民謡やマザーグースの曲でよく見られる技法なので、意識して歌詞を見てみると面白い発見があるかもしれない。
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