ワシントン広場の夜はふけて

後のヒッピーに繋がるカウンターカルチャーの聖地

『ワシントン広場の夜はふけて』(英題『Washington Square』)は、アメリカのディキシーランド・ジャズのバンド、ヴィレッジ・ストンパーズが1963年にリリースしたインストゥルメンタル(歌の無い楽曲)。

曲名の「ワシントン広場」とは、ニューヨーク市グリニッジ・ヴィレッジにあるワシントン・スクエア公園のこと。マンハッタン5番街の起点。

ワシントン・スクエア公園

写真:ワシントン・スクエア公園(ニューヨーク市グリニッジ・ヴィレッジ)出典:Wikipedia

グリニッジ・ヴィレッジは当時、後のヒッピーに繋がるビート・ジェネレーション(ビートニク)やカウンターカルチャー(主流社会と相反する文化)の東海岸における中心地(聖地)だった。

ヴィレッジ・ストンパーズというバンド名も、このグリニッジ・ヴィレッジに由来している。この地区の中心地である「ワシントン広場」を曲名にすることで、グリニッジ・ヴィレッジにおける当時のカウンターカルチャーの隆盛が暗に表現されているのだろう。

ちなみに、『Y.M.C.A.』や『ゴーウェスト』などの大ヒットで知られるアメリカの男性6人組グループ、ヴィレッジ・ピープル(Village People)のグループ名も、この聖地グリニッジ・ヴィレッジに由来している。

【YouTube】 ワシントン広場の夜はふけて/ヴィレッジ・ストンパーズ

英語歌詞の意味・内容

『ワシントン広場の夜はふけて』は当初歌の無いインストゥルメンタル(器楽曲)だったが、作曲者のボブ・ゴールドステイン(Bobb Goldsteinn)とデヴィッド・シャイア(David Lee Shire)によって歌詞がつけられた。

【YouTube】 Washington Square (with lyrics)- The Ames Brothers

どのような英語の歌詞がつけられたのだろうか?次のとおり歌詞を一部引用する。

1.
From Cape Cod Light to the Mississip,
to San Francisco Bay,
They're talking about this famous place,
down Greenwich Village way.

They hootenanny all the time
with folks from everywhere,
Come Sunday morning, rain or shine,
right in Washington Square.

2.
An' so I got my banjo out,
jus' sittin' and catchin' dust,
And painted right across the face
"Greenwich Village or Bust."

My folks were sad to see me go,
but I got no meanin' there.
I said "Goodbye, Kansas, Mo,
and hello, Washington Square!"

<引用:Bobb Goldsteinn/David Lee Shire "Washington Square">

英語歌詞の1番と2番の大まかな意味(大意)は次のとおり。

「アメリカ中で噂のグリニッジ・ヴィレッジ。ワシントン広場では、いつだって仲間が集まりフォークソングを歌ってる。俺はカンサスを出て、ワシントン広場へ行くんだ!」

この後の歌詞(全部で6番まで)は、カンサスを出てワシントン広場へ向かった人物が、途中で気になった奴らを仲間に引き連れながら、ついにカウンターカルチャーの聖地ワシントン広場に到着し、自由の歌声を響かせるといったような内容となっている。

日本語歌詞について

日本では、『可愛いベイビー』『ルイジアナ・ママ』などの訳詞で知られる漣 健児(さざなみ けんじ/1931-2005)が作詞した日本語版の歌詞が存在し、ダーク・ダックスやデューク・エイセス、ザ・ベンチャーズらが歌謡曲としてカバーしている。

【YouTube】 ダニー飯田とパラダイス・キング

英語の歌詞と比較して、日本語版はどのような内容なのだろうか?以下引用。


静かな街の 片すみに
冷たい風が 吹き抜ける

ワシントン広場の 夜はふけて
夜霧に浮かぶ 月明かり
<以下、コーラス省略>


冷たい風が 吹き抜けて
黒い落ち葉が ただひとつ


黒い落ち葉が ただひとつ
風の吹くまま 舞っている


風の吹く間に 待っている
男心を 誰が知る


男心を 誰が知る
冷たい風が 知っている

<引用:漣 健児『ワシントン広場の夜はふけて』>

ご覧の通り、英語版の歌詞の内容とはまったく関連性が無く、寒い夜の広場で誰かを待つ男性の男心を歌った一般的な歌謡曲となっている。

似てる曲について

余談だが、『ワシントン広場の夜はふけて』とメロディが似ている曲として、サントリーオールドウイスキー CMソング『夜がくる ~人間みな兄弟~』が挙げられることがある。

【YouTube】 夜がくる ~人間みな兄弟~

YouTube動画で確認してみると、確かに曲の雰囲気は似ている。この曲の作詞作曲は、レナウン『ワンサカ娘』、日立グループ『日立の樹』、積水ハウス『積水ハウスの歌』など、数多くの定番CMソングを手掛けた小林亜星(こばやし あせい)。

『夜がくる~人間みな兄弟~』が作曲されたのは、『ワシントン広場の夜はふけて』が発表された数年後の1967年頃なので、後者が前者に何らかの影響を与えた可能性はあるかもしれない。「夜」というテーマも共通している。

ちなみに、『ワシントン広場の夜はふけて』と雰囲気が似ている曲としては、1966年発表の『銀色の道』が挙げられることもあるようだ。

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