美しき天然

日本の唱歌/チンドン屋の定番曲

『美しき天然』(うるわしきてんねん)は、1902年に作曲された日本の唱歌。当時の楽譜には「ワルツのテンポで」と記されており、日本初のワルツとして紹介されることが多い。『天然の美』とも題される。

歌詞付きの唱歌だが、大正・昭和初期に数名でチンドン太鼓を鳴らして町を練り歩き宣伝を行った「チンドン屋」の定番曲として演奏されたことから、歌詞に比べてメロディが特に全国的に知名度が高い。

作曲者は、当時の日本海軍・佐世保鎮守府(長崎県)で軍楽長を務めていた田中 穂積(たなか ほづみ/1855-1904)。

田中穂積の出身地である山口県岩国市の桜の名所・吉香公園(きっこうこうえん)には、『美しき天然』の歌碑と胸像が建立されている(上写真)。

また、長崎県佐世保市の烏帽子岳(えぼしだけ)にも歌碑が、同じく佐世保市の展海峰には銅像がそれぞれ建てられている。

作詞者は、滝廉太郎作曲『花(春のうららの隅田川)』の作詞で知られる詩人・武島 羽衣(たけしま はごろも/1872-1967)。『美しき天然』のために武島が新たに書き下ろした歌詞ではなく、田中穂積による作曲当時既に発表されていた既存の詩集から転用されたもの。

なお、作曲者の田中が武島の詩を採用するにあたってイメージしていたのは、田中が当時赴任していた長崎県佐世保市に広がるリアス式海岸の群島「九十九島(くじゅうくしま)」の風景だそうだ。

日本の民謡・童謡・唱歌 歌詞と視聴

【試聴】土居裕子 - 美しき天然

【試聴】チンドン屋による演奏 『美しき天然』

歌詞:『美しき天然』

右画像:佐世保市展海峰展望台にある田中穂積の銅像


空にさえずる鳥の声
峯より落つる滝の音
大波小波とうとうと
響き絶やせぬ海の音

聞けや人々面白き
この天然の音楽を
調べ自在に弾きたもう
神の御手(おんて)の尊しや


春は桜のあや衣
秋はもみじの唐錦(からにしき)
夏は涼しき月の絹
冬は真白き雪の布

見よや人々美しき
この天然の織物を
手際見事に織りたもう
神のたくみの尊しや


うす墨ひける四方(よも)の山
くれない匂う横がすみ
海辺はるかにうち続く
青松白砂(せいしょうはくさ)の美しさ

見よや人々たぐいなき
この天然のうつし絵を
筆も及ばずかきたもう
神の力の尊しや


朝(あした)に起こる雲の殿
夕べにかかる虹の橋
晴れたる空を見渡せば
青天井に似たるかな

仰げ人々珍らしき
この天然の建築を
かく広大に建てたもう
神の御業(みわざ)の尊しや