江戸しりとり唄 牡丹に唐獅子

博多どんたくの歌『ぼんち可愛いや』のルーツ

江戸時代に創作された「しりとり唄」は数多く存在するが、本ページでは、現代においても比較的有名な『江戸しりとり唄(牡丹に唐獅子)』を取り上げる。

幕末から明治初期にかけて流行した「しりとり唄」で、お手玉や毬つき唄、子守歌としても歌われたという(挿絵:唐獅子牡丹図/東本願寺)。

博多どんたくの歌『ぼんち可愛いや』のルーツになっているほか、『江戸の子守唄』との関連性も見られるなど興味深い点も多い。

現代のしりとりでは、末尾の一文字を次の語句につなげるが、江戸時代の「しりとり唄」では文末の単語がそのまま次の文頭に用いられる場合も多く、比較的自由度が高い。自由度が高いからこそ、柔軟なアイディアが生まれ、多彩な文化が花開くのだろう。

歌詞全文

牡丹に唐獅子 竹に虎 虎をふんまえ 和藤内
内藤様は さがり藤 富士見西行 うしろ向き
むき身蛤 ばかはしら 柱は二階と 縁の下
下谷上野の 山かずら 桂文治は 噺家で

でんでん太鼓に 笙の笛 閻魔はお盆と お正月 
勝頼様は 武田菱 菱餅 三月 雛祭
祭 万燈 山車 屋台 鯛に鰹に 蛸 鮪
ロンドンは異国の 大港 登山駿河の お富士山

三べんまわって 煙草にしょ 正直正太夫 伊勢のこと
琴に三味線 笛太鼓 太閤様は 関白じゃ
白蛇のでるのは 柳島 縞の財布に 五十両
五郎十郎 曽我兄弟 鏡台針箱 煙草盆

坊やはいいこだ ねんねしな 品川女郎衆は 十匁
十匁の鉄砲 二つ玉 玉屋は花火の 大元祖
宗匠のでるのは 芭蕉庵 あんかけ豆腐に 夜たかそば
相場のお金が どんちゃんちゃん ちゃんやおっかあ 四文おくれ

お暮れが過ぎたら お正月 お正月の 宝船
宝船には 七福神 神功皇后 武内
内田は剣菱 七つ梅 梅松桜は 菅原で
わらでたばねた 投げ島田 島田金谷は 大井川

かわいけりゃこそ 神田から通う 通う深草 百夜の情
酒と肴は 六百出しゃ気まま ままよ三度笠 横ちょにかぶり
かぶりたてに振る 相模の女 女やもめに 花が咲く
咲いた桜に なぜ駒つなぐ つなぐかもじに 大象とめる

牡丹に唐獅子 竹に虎

ここからは、『江戸しりとり唄(牡丹に唐獅子)』の主なキーワードやフレーズの意味や背景などについて若干補足していく。

牡丹に唐獅子 竹に虎 虎をふんまえ 和藤内

まずは冒頭の「牡丹に唐獅子 竹に虎」。これは「こたつにみかん」のように、調和して絵になる取り合わせの良いもののたとえで、「梅に鶯 紅葉に鹿 牡丹に唐獅子 竹に虎」などと続けられる。

和藤内(わとうない)とは、江戸時代の人形浄瑠璃「国性爺合戦(こくせんやかっせん)」の主人公。人食い虎を怪力でねじ伏せ従わせた。これは「和藤内の虎退治」として、お座敷遊び『虎々(とらとら)/虎拳(とらけん)』のルーツとなっている。

でんでん太鼓に 笙の笛

でんでん太鼓に 笙の笛 閻魔はお盆と お正月

江戸の子守唄』の歌詞にも登場する「でんでん太鼓に 笙の笛」。後述の「坊やはいいこだ ねんねしな」と合わせて、子守歌からの影響が見受けられる。

実際に『江戸の子守唄』のメロディで子守歌として歌われていたという記述をどこかで見かけたが、さもありなん、これだけ歌詞が長ければ、十分に子供を寝かしつけられそうだ。

「閻魔はお盆とお正月」については、江戸時代、お盆の7月16日とお正月の1月16日は閻魔賽日(えんまさいじつ)として、閻魔大王を祀る寺では縁日が開かれ賑わった。

お盆と正月は、いわゆる「地獄の窯の蓋も開く」というやつで、地獄の鬼でさえも罪人を責めるのをやめて休息する。この世でもみな仕事や奉公を休んで閻魔詣でに繰り出していった。

江戸の太宗寺、善養寺、華徳院は「江戸三大閻魔」といわれる。深川閻魔堂や京都の千本閻魔堂も有名。

坊やはいいこだ ねんねしな

坊やはいいこだ ねんねしな 品川女郎衆は 十匁

博多どんたくの歌『ぼんち可愛いや』のルーツとなった有名な文句。「十匁(じゅうもんめ)」の「匁」は江戸時代における銀の通貨単位で、一匁は一両の十分の一に相当した。

「女郎衆(じょろうしゅ/じょろしゅ)」は遊女の意。ちなみに、静岡県民謡『ノーエ節』も同じくしりとり唄の要素があり、「三島女郎衆」が歌詞に登場する。

関連ページ

博多どんたくの歌『ぼんち可愛いや』
歌詞の意味・由来/ルーツは江戸のしりとり唄
江戸の子守唄
ねんねんころりよ おころりよ ぼうやはよい子だ ねんねしな
ノーエ節 静岡県民謡
歌詞は緩めの「しりとり唄」になっている。「女郎衆」の単語も見られる。
いろはに金平糖(こんぺいとう)
甘いは砂糖 砂糖は白い 白いはうさぎ うさぎははねる