青い山脈 歌詞の意味・考察

若くあかるい歌声に 雪崩は消える 花も咲く

「若くあかるい歌声に」が歌いだしの『青い山脈』(あおいさんみゃく)は、1949年に発表された映画主題歌。

作詞は、童謡『かなりや』、盆踊り曲『東京音頭』などで知られる西條八十(さいじょう やそ/1892-1970)。

蔵王連峰

作曲は、『東京ブギウギ』、『銀座カンカン娘』などを手掛けた服部良一(はっとり りょういち/1907-1993)。

終戦後まもない時期の青春映画というだけあって、その主題歌の歌詞には、古い体制の崩壊と新しい時代の到来を印象付けるような表現がいくつか見られる。

参考までに、『青い山脈』一番と二番の歌詞から、いくつかキーワードを拾って、その意味を簡単に解釈・考察してみたい。

写真:蔵王連峰(ざおうれんぽう/出典:Wikipedia)

【試聴】青い山脈 藤山 一郎

雪崩は消える

『青い山脈』一番の歌詞にある「雪崩(なだれ)は消える」については、字数的に制約のある歌詞での簡潔な表現のため、言葉が足らず若干の違和感を覚える方も少なくないかも知れない。

言葉を補って解釈してみると、「危険な雪崩を起こす積雪は、春と訪れと共に溶け去り、もう雪崩はおきない」となるだろうか。

または、「全体を白く覆っていた積雪は雪崩となって崩れ去り、崩れ落ちた雪も春の訪れと共に溶け去った」とも解釈できそうだ。

青森県の白神山地(しらかみさんち)

写真は、原作者の故郷を見渡す青森県の白神山地(しらかみさんち)。1993年(平成5年)12月、屋久島とならんで日本初のユネスコ世界遺産(自然遺産)に登録された(出典:Wikipedia)

雪の意味は?

ところで、この「雪」には一体どんな意味が込められているのだろうか?

思うに、『青い山脈』の歌詞では、終戦による古い体制の崩壊と新しい時代の到来が暗示されており、「雪」は戦前・戦中の古い体制や緊張状態の象徴として使われていると考えられる。

雪に覆われる冬の八甲田山(はっこうださん)

全体を白一色で覆いつくす冷たい雪は、戦中の冷酷で封建的・全体主義的な傾向の象徴であり、それが終戦により崩れ去った様が「雪崩(なだれ)」という歌詞に暗に表現されているように思われる。

そして雪崩となって崩壊した雪も、訪れた春の暖かい日差しによって溶け去り、消えてなくなった。それが「雪崩は消える」という歌詞に込められているのではないだろうか。

写真:雪に覆われる冬の八甲田山(はっこうださん)。青森県・奥羽山脈の北端に位置する(出典:Wikipedia)

雪割桜 ゆきわりざくら

雪割桜(ゆきわりざくら)とは、ツバキカンザクラ(椿寒桜)の異名。早い地域では、まだ雪が降っている1月末ぐらいから濃いピンク色の花が咲き始める。

ツバキカンザクラ

写真:ツバキカンザクラ(出典:ブログ「枯れ木も山の賑わい」)

枝に積もった雪を割って咲くように見える様から、「雪割桜」の異名がついたと想像される。

さて、なぜ『青い山脈』の歌詞で「雪割桜」が用いられたのだろうか?

これについても、上述の「雪崩は消える」と同様に、「雪」は古い体制・時代の象徴であり、その冷たさや重さに耐えて雪を割って花を咲かせる「雪割桜」は、まさに時代の変化を表すにふさわしい事物であったと考えられる。

ちょうど7文字なので、歌詞全体の七五調に乗せやすかったという作詞家的な視点もあったであろうことは言うまでもない。

古い上衣よ さようなら

『青い山脈』二番の歌詞冒頭「古い上衣(うわぎ)よ さようなら」についても、上述の「雪崩は消える」や「雪割桜」の延長線上で解釈ができる。

つまり、「古い上衣(上着)」は古い時代の象徴であり、それに対してはっきりと「さようなら」と決別の意を表している。

映画『青い山脈』が公開された1949年は、まだ日本がGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)に占領されていた頃であり、こうしたくどいまでの「過去への決別」的な歌詞は、GHQによる日本民主化へ向けた徹底した思想教育が反映されたものと考えられる。

青い山脈の場所はどこ?モデルは?

余談だが、「青い山脈」とは具体的にどの山なのか?モデルとなった場所は?などの疑問をネット上でいくつか見かけた。

例えば、ヤフー知恵袋によれば、「青い山脈」のモデルについて次のように回答されていた。

原作者、石坂洋次郎は青森県弘前市生まれで、大学卒業後、弘前で1年、横手で13年教員を勤め、その体験をもとに小説を書いたと伝えられています。歌詞碑や文学館は両県に存在し、青い山脈は「石坂が幼少期から目にしていた白神山地だ」という青森説と「13年も教員を務めた横手の奥羽山脈だ」という秋田説があります。

<引用:ヤフー知恵袋より>

この回答によれば、原作者の故郷である青森説(白神山地)と、教職員時代の秋田説(横手の奥羽山脈)の二つが有力なようだ。

ちなみにウィキペディアによれば、作曲者の服部良一は著書の中で、移動中の汽車内で見た六甲山脈の連峰から曲想を得たと記しているという。

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