すっとこどっこい 意味・語源・由来

夏祭りの馬鹿囃子との関連性が伺われる伝統的な江戸言葉

有名な江戸言葉・江戸弁の一つ「すっとこどっこい」の意味について、三省堂「大辞林」で調べてみると、「相手をののしっていう語。馬鹿野郎。まぬけ。」と解説されている。

すっとこどっこい 意味・語源・由来

その由来については、同じく大辞林で「馬鹿囃子(ばかばやし)の囃子詞(ことば)」と簡潔に述べられているが、なぜ馬鹿囃子で「すっとこどっこい」が使われるのか、またその語源は何なのか、疑問が残る。

そこで、このページでは、馬鹿囃子と「すっとこどっこい」の関係や、の語源などについて、簡単に補足してみたい。

すっとこの意味・語源

小学館「精選版 日本国語大辞典」によれば、「すっとこ」とは次の二つの意味があるという。

① はだかのこと。裸体。
② 醜い男をののしっていう語。

<引用:小学館「精選版 日本国語大辞典」より「すっとこ」>

すっとこどっこいの「すっとこ」の意味としては、2番目の「醜い男をののしっていう語」が当てはまると思われる。裸である必要はないだろう。

すっとこ被(かぶり)

同じく上述の「日本国語大辞典」では、「すっとこ」に関連して、「すっとこ被(かぶり)」という興味深い言葉の解説を掲載している。

馬鹿囃子(ばやし)のひょっとこなどがかぶる手ぬぐいのかぶり方。手ぬぐいを広げて頭をすっぽり包み、顔を出して、顎(あご)の部分でその手ぬぐいを結ぶ。ひょっとこかぶり。

<引用:小学館「精選版 日本国語大辞典」より「すっとこ被」>

ここでも「馬鹿囃子(ばかばやし)」とのつながりが確認できる。「すっとこ」は「ひょっとこ」であり、上述の「醜い男をののしっていう語」という意味が当てはまるのがよく分かる。

どっこいは意味のない囃子言葉

「どっこい」の語源については、こちらのページ「どっこい 意味・語源・由来」でも解説したとおり、相撲や歌舞伎の掛け声「ドコエ(何処へ)」。

だが、「すっとこどっこい」における「どっこい」は、語源の「何処へ?」のような意味がある言葉ではなく、語調を整えるための単なる囃子詞(ことば)と考えるべきだろう。

馬鹿囃子とは?

「すっとこどっこい」の由来とされる馬鹿囃子(ばかばやし)とは、関東での祭囃子(まつりばやし)の一つ。おかめや「ひょっとこ踊り」も合わせて演じられる場合もある。この「馬鹿囃子」と「ひょっとこ」が大きなポイント。

佐原囃子

写真:佐原囃子(千葉県香取市・佐原の大祭/出典:Wikipedia)

この馬鹿囃子にも語源があり、江戸時代の和歌囃子(わかばやし)または若囃子(わかばやし)が転化したと考えられている。

馬鹿囃子とすっとこどっこい

上述した三省堂「大辞林」の解説では、「すっとこどっこい」は「馬鹿囃子(ばかばやし)の囃子詞(ことば)」であるとのことだが、実際にはどのようなものなのだろうか?

囃子詞とは、例えば北海道民謡『ソーラン節』でいえば、「ヤーレン ソーラン」や「ハー ドッコイショー ドッコイショ!」のように、歌詞の合間に合いの手のように入れる意味のない掛け声のこと。

現代の祭りでは「すっとこどっこい」をそのまま囃子詞として用いている地域はないかもしれないが、それに類似した「トコドッコイ」という掛け声を屋台の曳き回しの際に用いている地域が遠州地方にあるようだ。

名古屋甚句とトコドッコイ

愛知県名古屋市に伝わる座敷歌『名古屋甚句』(なごやじんく)では、囃子詞(ことば)として「トコドッコイ」が印象的に用いられている。

アーエ 宮の熱田の 二十五丁橋で エー
アー 西行法師が腰をかけ 東西南北見渡して
これほど涼しいこの宮を
誰が熱田と ヨーホホ アー 名を付けた エー
トコドッコイ ドッコイショ

この「トコドッコイ」と「すっとこどっこい」の関係は不明だが、江戸弁では「転ぶ」を「すっ転ぶ」というように、「トコドッコイ」を江戸風に表現したものが「すっとこどっこい」なのかもしれない(やや強引)。

サントコドッコイがルーツ?

夏祭りの祭囃子で演奏される太鼓の打ち方の一つに、「サントコドッコイ」という基本パターンがある。YouTubeにもいくつか動画が上がっているのでご紹介。

【試聴】 ぶち合わせ太鼓練習 サントコドッコイ

「サントコドッコイ」という言葉では、太鼓を叩くリズムが文字で表現されており、そのリズムは「すっとこどっこい」を発音する際のリズムと完全に一致する。

遠州横須賀三熊野神社では、大祭の囃子演技奉納において、ひょっとこが演技を行う際のお囃子として、この「サントコドッコイ」のリズムで太鼓が演奏される。

【試聴】 遠州横須賀三熊野神社大祭2015・囃子演技奉納

つまり、「サントコドッコイ」がひょっとこ踊りと結びついていることが分かる。

「サントコドッコイ」が使われ始めた時期があきらかでないため、それが「すっとこどっこい」のルーツかどうかは不明だ。もし「サントコドッコイ」が「すっとこどっこい」の発祥より前に存在していたフレーズなら面白い。

江戸言葉・江戸弁と「ひょっとこ」

上述の「すっとこ被(かぶり)」の解説では、「すっとこ」と馬鹿踊りの「ひょっとこ」との関係性が明らかになった。

なぜ「ひょっとこ」が「すっとこ」に変化してしまうのか?それには、「すっとこどっこい」を含む江戸言葉・江戸弁の特徴を再確認する必要がある。

江戸言葉・江戸弁では、「東(ひがし)」が「しがし」となったり、「左(ひだり)」が「しだり」になったりと、先頭のハ行がサ行に入れ替わって発音される場合が多くみられる(その逆も)。

これを「ひょっとこ」に当てはめると「しょっとこ」になり、「すっとこ」に一歩近づいた感がある。

さらに江戸言葉では、「あそこ」が「あすこ」、「あそぶ」が「あすぶ」のように、「そ」が「す」に変化する場合が多い。

「しょっとこ」は「そっとこ」に近く、そこから江戸言葉の法則に従って「すっとこ」になった可能性も十分に考えられる。

まとめ・仮説

以上の解説を総合すると、「すっとこどっこい」という言葉が江戸で生まれた経緯がなんとなく想像できる。

最初に「すっとこどっこい」という言葉を使った人が、どういう発想でこの言葉を罵りの言葉として使ったのか、具体的に想像すると次のようになる。

江戸のあるところに、腹の立つことを言われた男がいた。すぐに「馬鹿野郎」と言い返してやろうと思ったが、そのまんま言ったのでは野暮だ。

なんとか上手い言い回しで言い返してやろうと瞬間的に考えたところ、馬鹿囃子でサントコドッコイのリズムに乗せて踊る「ひょっとこ」が頭に浮かんだ。

その踊る姿は滑稽で馬鹿馬鹿しく、言い返したい相手を馬鹿にするには十分だった。

そこで男は相手に対し、「てやんでぇ、この『ひょっとこどっこい』!」と言い返したのだった。

江戸言葉での「ひょっとこどっこい」は「すっとこどっこい」に近い発音となり、こうして相手を罵る言葉としての「すっとこどっこい」は世に生まれたのであった。

もちろんこれは単なる空想だが、一つの筋の通った仮説でもあり、当たらずとも遠からずといったところではないだろうか。少しでも参考にしていただければ幸いだ。

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