『若者の夢』盲目のフィドル吹きが奏でたメロディ

ダニーボーイの謎 Danny Boy

Buntingの「The Ancient Music of Ireland(アイルランド古典音楽集)」第一巻に掲載されていたその曲とは、「Londonderry Air」というタイトルとは似ても似つかぬ”Aislean an Oigfear”というゲール語の題名でした。

英語では「The Young Man’s Dream(若者の夢)」という意味合い。素敵な彼女と夢の中でいい仲になりそうだったのに夢が覚めて皆消えてしまったというありがちな夢オチ的内容の歌詞も付けられていたようです。

Jane Rossが盲目のJimmyから聞いた曲とは?

現在の「ダニーボーイ」に関するいくつかの研究によれば、Jane Rossが盲目のJimmyから聞き取ったのは、この「The Young Man’s Dream(若者の夢)」を彼がアレンジしてアドリブ的に演奏したものであるとの結論が出ているようです。

このアドリブ版が最終的にそのままの形でFrederic Edward Weatherly(フレデリック・エドワード・ウェザリ)の耳に入ったのか、それともアメリカで更にアレンジや記憶違いが生じたのかは不明ですが、どちらにしても「ダニーボーイ」は、原曲の古臭さを時代に合わせて洗練させて誕生した、アドリブが生んだ名曲と言えるでしょう。

「若者の夢」のルーツは「オカハン族の嘆き」か?

オカハン族の首長であるRory Dali O’ cahan (1550-1660)が妖精から聞き取ったという不思議な曲”O’cahan’s Lament(オカハン族の嘆き)”が盲目のJimmyに伝わったと前のページで少し触れた事について少し補足します。

「若者の夢」は、Buntingが編纂した「The Ancient Music of Ireland(アイルランド古典音楽集)」第一巻に収録されていました。

この第一巻が発行される数年前の1792年、アイルランドのベルファスト(Belfast)で開催されたハープフェスティバルをバンティングが民謡採取のために訪れており、そこでDenis O’ Hampsey(1695-1807)というハープ奏者に注目して彼から数多くのアイルランド民謡を聞き取ったそうです。

このDenis O’ Hampseyの出身地はその昔オカハン族(the O’ cahan)の土地であったRoe Valleyであり、更に、Denis O' Hampseyはオカハン族の首長Rory Dali O' cahanの親戚であるBridget O' cahan の元で音楽の訓練を受けたとのことです。

これらの事柄が本当なら、”O' cahan’s Lament(オカハン族の嘆き)”がBuntingの音楽集に採取されていてもおかしくありませんが、この”O' cahan’s Lament(オカハン族の嘆き)”が「若者の夢」と同じメロディーなのかどうかは、謎のままです。

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ダニーボーイの謎 目次

  1. 父親の歌?母親の歌?
  2. 法律のできるソングライター
  3. アイルランドからアメリカへ①
  4. アイルランドからアメリカへ②
  5. ロンドンデリーの歌
  6. 盲目のフィドル弾き伝説
  7. 彼女の創作疑惑
  8. 見当たらない彼女のメロディ
  9. 青年の夢
  10. 100曲以上の歌詞

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