加詞(歌詞の追加)と著作権 もりくま騒動

作詞者に無断で歌詞を追加しトラブル発生

童謡『森のくまさん』アレンジ歌詞追加を巡り、2017年1月に勃発した森のくまさん騒動は、作詞者(訳詞者)の馬場祥弘氏とレコード会社のユニバーサルミュージックとの話し合いの結果、両者の間で和解が成立した。

和解条件の一つとして、アーティスト名の前に、歌詞を追加したことを示す「加詞」という文言を併記することになったようだ。

この「加詞」という表記は、2017年1月時点では知名度はそれほど高くはないと思われるが、森のくまさん騒動以外のケースでは、一体どれぐらい前から使われていた言葉なのだろうか?ネットで簡単に調べてみた。

合わせて、歌詞の追加を巡る有名な騒動・トラブルをいくつかまとめている。

ゆず『見上げてごらん夜の星を ~ぼくらのうた~』

昭和の人気歌手・坂本九(さかもと きゅう)による大ヒット曲『見上げてごらん夜の星を』(作詞:永六輔)を、平成の男性フォークデュオ「ゆず」が2006年にライブでカバーした際、ゆずオリジナルのメロディや歌詞が追加された。

作詞者の永六輔が2016年に亡くなると、マスコミによる追悼ムードの煽りを受けて、ゆずカバー版が2016年に初レコーディングの運びとなった。

2016年の日本生命CMソングとして起用されたほか、同年末の「第67回NHK紅白歌合戦」では感動的な文脈で紹介され、ゆず本人による歌唱も披露されるなど注目を集めた。

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ゆずカバー版『見上げてごらん夜の星を ~ぼくらのうた~』では、「作詞:永六輔」の表記に加え、森のくまさん騒動のケースと同様に、「加詞:北川悠仁(ゆず)」が併記された。

「加詞」が付記されて楽曲リリースまで至ったケースとしては、森のくまさん騒動以前では、このゆずカバー曲が最も知名度が高いと思われる。

筆者はゆず以前に「加詞」という表記を目にしたことがないので、もしかしたら「加詞」という言葉が明示的に使われたのは、このゆずカバー曲が始めてなのかもしれない。もし他に見つかれば、またこのページに追記していく予定だ。

歌詞の追加でトラブルになったケース

「加詞」という言葉こそ使われていないものの、歌詞の追加でトラブルになった有名なケースとしては、2007年に勃発した「おふくろさん騒動」、2014年の「会いたい騒動」などが挙げられる。

前者についてはマスコミ等で連日取り上げられ、知名度も非常に高い騒動なので、詳細はこちらの個別ページ「おふくろさん騒動 森進一による歌詞追加」の解説に譲ることとしたい。

2014年の「会いたい騒動」について簡単にまとめると、沢田知可子の1990年のヒット曲『会いたい』について、2014年のテレビ番組で沢田知可子が替え歌を歌ったところ、作詞者の沢ちひろが激怒し、著作者人格権を侵害されたとして訴訟を提起したという事件。

全面的に歌詞が入れ替えられており、果たしてオリジナルの著作権者が同一性保持権を主張できるほどの替え歌なのかどうか司法判断を興味深く見守っていたが、結局訴訟は取り下げられてしまい、替え歌と著作権に関するジャッジメントはなされずに事件は終わってしまった。

ちなみに、同じメロディについて異なる歌詞がつけられ、それぞれに別の歌詞の著作権が成立することは、ドイツ歌曲『野ばら』や他の世界の民謡・童謡を見ても明らかである。

『会いたい』の替え歌が全面的な書き換えならば、オリジナルとは別の著作物として把握される可能性が少なからずあっただけに、訴訟が取り下げられたことは(傍観者としては)若干残念な結果に終わってしまったという感じが否めない。

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