死の舞踏 サン=サーンス

真夜中に不協和音を奏でる死神のヴァイオリンと骸骨のシロフォン

フランスの作曲家サン=サーンスが1872年に作曲した交響詩『死の舞踏』では、穏やかなワルツのテンポにのせて、ハロウィンのイラストで見られるような不気味な夜の墓場のワンシーンが描写される。

まず冒頭では、夜の12時を告げる時計の音を模したハープの音が12回爪弾かれる。すると死神が現れ、ヴァイオリンの不協和音と共に、不気味な死の舞踏会が繰り広げられる。

最後に、夜明けを告げる雄鶏の鳴き声がオーボエで描写され、ガイコツたちが眠りにつくかのように、静かに曲は締めくくられる。

興味深いことに、ワルツを踊るガイコツたちの骨の音を表現するため、当時クラシック音楽ではほとんど用いられることのなかったシロフォン(木琴系の打楽器)が使用されている

このシロフォンによる骨の表現は、サン=サーンスによる組曲『動物の謝肉祭』第12曲『化石』でも使われている。両曲を合わせて聴いてみると面白いかもしれない。

【YouTube】サン=サーンス:死の舞踏 Op. 40

曲の詳細について

サン=サーンス『死の舞踏』の不気味な世界観は、フランスの詩人アンリ・カザリス(Henri Cazalis/1840-1909)による詩が元になっており、楽譜の冒頭で次のようなカザリスの詩が引用されている(出典:wikipedia)。

ジグ、ジグ、ジグ、墓石の上
踵で拍子を取りながら
真夜中に死神が奏でるは舞踏の調べ
ジグ、ジグ、ジグ、ヴァイオリンで

冬の風は吹きすさび、夜は深い
菩提樹から漏れる呻き声
青白い骸骨が闇から舞い出で
屍衣を纏いて跳ね回る

ジグ、ジグ、ジグ、体を捩らせ
踊る者どもの骨がかちゃかちゃと擦れ合う音が聞こえよう

静かに! 突然踊りは止み、押しあいへしあい逃げていく
暁を告げる鶏が鳴いたのだ

当初サン=サーンス『死の舞踏』は歌曲として作曲され、その2年後に管弦楽曲として再構築された。

『死の舞踏』というテーマはクラシック音楽や西洋美術で見られる様式の一つで、サン=サーンス以外にも、フランツ・リストがピアノ独奏を伴う管弦楽曲『死の舞踏』を1865年に初演している。

また、フランツ・リストはサン=サーンス『死の舞踏』をピアノ独奏用に編曲した作品も残しており、さらにリストの編曲をさらに編曲したウラディミール・ホロヴィッツ版『死の舞踏』も知られている。

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