ウィーン奇想曲 クライスラー

偽作ではなく本人の作品として発表された小品

『ウィーン奇想曲』は、オーストリア出身の音楽家フリッツ・クライスラー(Fritz Kreisler/1875-1962)によるヴァイオリンとピアノのための小品。

奇想曲とは音楽の一形式で、カプリッチョ(イタリア語)、カプリース(フランス語)などとも表記される。

カプリッチョはイタリア語で「気まぐれ」を意味する。奇想曲に特定の音楽技法や形式があるわけではなく、むしろ形式に縛られない例外的で気まぐれな性格を表している。

写真:ベルヴェデーレ宮殿(オーストリア・ウィーン)

【YouTube】クライスラーによる自作自演『ウィーン奇想曲』

評論家から「ずうずうしい!」と批判

クライスラーというと、バロック期など過去の作曲家による名前を借りた偽作が多いことで知られるが、この『ウィーン奇想曲』は偽作ではなく、最初からクライスラー本人の作品として発表された。

そのため、演奏会のプログラムなどで、ヨーゼフ・ランナー作曲として発表された偽作の一つ『愛の喜び』と自作の『ウィーン奇想曲』が並ぶと、

「ランナーの作品と自分の作品を並べるとはずうずうしい!」

と評論家から批判されたという。

ヨーゼフ・ランナーといえば、ヨハン・シュトラウス一家に先立ってウィンナ・ワルツの様式を確立させた「ワルツの始祖」とも言うべきウィーンの大作曲家。

ちなみに、クライスラーの偽作が明らかになるのは、『ウィーン奇想曲』発表から25年後の1935年のこと。それまでは、こうした「誤解」も少なくなかったことだろう。

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